「11」突然NHKから取材依頼

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あんしん館設立から2年後の年明け群馬県は肌を切るような冷たい空っ風が吹く大寒に入った頃、何の前触れもなく突然NHK記者と名乗る人から電話が入る。

この頃になると新聞記事で何回も掲載して貰えた事で一般葬儀社とは異なる存在として少しだけ知名度は上がってました。

とはいえNHKから取材要請には少し驚きましたがテレビ放映されるとは思ってませんから気軽に返事をしたと思います。

最初は記者だけ来て取材要請の経緯など話してくれると他県のNHKで制作、放送された葬儀屋があったそうでそれを見た群馬県の人達から、

もっと家族目線で葬儀支援をしてるNPOがあるから取材して欲しい』と何件も手紙やメールが届き話を聞かせて貰おうと来られたようでした。

最近は葬儀屋も宣伝する時代になりましたが当時の葬儀社は料金に一切触れず『真心の葬儀』『24時間対応』などアバウトな内容ばかりの謳い文句ばかり。

葬式の宣伝は勿論クチコミ紹介も難しいと思ってた事で全国放送して貰えたら信用度は確実に上がりますから有難い話しです。

記者、カメラマン、音声の三人一組での取材8分30秒の放送に費やした取材時間は2か月に及び数時間はカメラを回す為放送内容は全く検討がつかない。

一番難しいのは葬儀支援の前例がなく取材する記者もイメージが湧かず、葬儀屋と葬儀支援の違いは説明より現実を見て貰うべきと思ってた折、

同じ家で3回目の葬式(祖父、父親、今回は叔父)依頼が入り家族に撮影のお願いをすると快く了承してくれました。

結果として客観的に見る記者の立場でも葬儀屋と葬儀支援の違いを肌で感じて貰えたのは大きかったです。

放送中最後の場面で「誰もが人生の終わりを心配することなく生きられる世の中になって欲しい。武井さんはそんな思いを胸に寄り添い続けます

記者自身の声で語ってくれてますが僕が伝えたものでなく、記者さんが感じたものを言葉にしたもので以降は当社理念として使ってます。

ホームページに埋め込んである動画は群馬県と周辺地域で放送されたものですが、全国放送もして貰えた事で放送直後は全国から問い合わせがありました。

その結果、葬儀支援を求める家族が全国に沢山いる現実も分り間違いで無かった実感もできました。

「葬儀屋」と「葬儀支援」の違い
・葬儀屋は家族に代わり施行するサービス業
・葬儀支援の主目的は残る家族の生活を守る事で葬式はその手段です

この言葉だけでは分かり難いかもしれませんが違いを頭の中入れ先の文章を読んで頂ければ両者の違いは徐々にハッキリしてくるでしょう。

ここまでの話しを振り返って頂ければ分るように葬儀支援は僕の意思とは別の流れで始まりました。ちょっ振り返ってみましょう。

① 37年前蒸発した父親逝去の一報が裁判所から届く
② 父親を看取ってくれた方に逢って話しを聞いた
③ 初めて直葬と散骨の葬式を知るが、その女性にある満足感は理解できなかった

④ 葬式を調べたが分らず、葬儀社勤務の千明を店長が人選して連れてきてくれた

⑤ 今の葬式は変だと主張すると千明から反論でなく納得と言われる

⑥ 何度か話してると千明は葬儀社の営業が騙してると感じ出来なくなる

⑦ 千明から葬儀屋をしませんか?と言われるがその気無く千明の食い扶持を探す

⑧ 葬儀屋と寺を周って話しを聞くと素晴らしい事ばかり聞かされる

⑨ しかし葬式をした人達曰く葬儀屋と布施が高過ぎると業者とは真逆

⑩ 葬儀屋と寺は嘘つきと分り闘争本能に火がつく
⑪ NPO申請中一軒の葬式依頼が入り近くの葬儀屋に頼むが最悪の葬儀屋

⑫ とても紹介など出来ないと自社施行するNPOへと進路変更する

⑬ 自分で関わるなら現存しない「葬儀支援センター」しかないと思う

⑭「5万円火葬支援パック」創り「一銭も要らないお葬式」を目指す

⑮ 利用対象者と僕自身の生活ギャップを埋めるべく経営法人閉鎖

⑯ 賃貸店舗を返却するつもりが家主に押し切られ「あんしん館開設」

⑰ 利用者から散骨場にと山林を無料で貸して貰うが、その後買い取る

⑱ 新聞だけでなくNHKで全国放送もされる

僕の意思は以下の3つだけです。
『父親の最後を看取ってくれた方に逢いに行く』
『千明の食い扶持を探そうと動き回る』
『2030年代の葬式事情予測』

いかがですか?忌み嫌ってる職業なのに千明という人間を介して業界の矛盾を知らされ高額な葬式で困ってる人達と会って「葬儀支援」が始まる。

葬儀屋は根本的に嫌いだから絶対しないけど葬儀支援が実現すれば「助かる人がいる。将来はもっと困る人達が増える」のは誰でも分ること。

だからお前が「やれ」と言わんばかりの強い流れと不思議なのは利用者と同じ目線になるのに会社を閉鎖して全てスタッフに無償提供と考えたこと。

この点は今もって不思議で理由は自分でも分りません。その代わり「事業完成に必要な人達との出会い」は自然にあった気がする。

また本気で始めた途端食えるようになったのも不思議だが、「これがお前の天職だよ」と親父が笑顔で言ってるような気さえします。

「天職」で検索すると天職を見つけるとか探すと書いてありますが違うと思う。天職は自分の意思とは関係なく導かれるものです。

多分逃げれば逃げられるでしょうが流れに乗れば勝手に進み知っておくべき問題点は反面教師で実感させられ考えさせられる。

また食うに困る状況にならず、その都度助けてくれる人が現われるなど不思議なことが沢山あります。

あれだけ忌み嫌ってた葬式の仕事は年間通して無休で24時間対応が10年以上続いてもストレスに成らず生き甲斐さえ感じられる。

親父の死は妹も全く同じ条件だし裁判所に行ったのも妹だけど、その後の流れは全く違って妹には人生の1ページで通り過ぎました。

しかし僕は人生そのものが大きく変わった。自分の体験でしかないけど、だからこれが天職か――、と感じるのだろうと思う。