直葬に最低限必要な項目と費用を出してみると
・お迎え搬送委託
・ドライアイス15㎏
・ドライアイスを包む綿花
・白タオル2本
・6尺白布棺
・線香具一式
・手続き代行
・棺霊柩搬送委託
・7寸白骨壺一式
・2名分人件費まで試算すると10万円を超えます。
5万円火葬など夢のまた夢で人件費ゼロでも5万円には到底及びません。
当時は一般葬と自宅家族葬ばかりで直葬を考えなくて良い状態でしたが、このままでは到底達成出来ないと無理を承知で89,900円の看板を出した。
「この価格では全くできないですよ。依頼が入ったらどうするんですか?」
「分かってるよ依頼までに何とかするしかないだろ」
利用者意識を確認したいのと半分ヤケクソ!?すぐ依頼は無いとの予想に反し直後に依頼が入りました。
幸い自宅逝去で搬送は無く市の霊柩車を使えば6,000円ほどで済むし、経机は業者さんから貰った物を使い線香具は安い物を揃えます。
全て自分達だけで行った結果この直葬は赤字ですが遺体が運べる車があって人件費計上しなければ5万円火葬は儲けは無いけど可能になると確信します。
すでに葬式用具業者、花屋さ、返礼品屋、料理屋と業者さん達も決まりましたが個人商売が多く支払いは当日と決める。
例えば料理屋は材料を仕入れて調理加工して提供ですから葬式の時は支払ってあり月末締めの翌月末支払いでは最大60日先の支払いです。
俺なら嫌だからで業者が締め切り日、支払日の指定がない限り基本的に全て葬式当日の支払いと決めた。
葬儀屋は基本掛け売りしないから支払いも買い掛けにすべきではない。
買い掛けが当り前になったら支払いが滞る可能性も高くなり信用を失うし、いつ入るか分らないのが葬式で今日かも明日かも或いは数か月先かもしれない。
だからこそ基本は全て現金払いで無借金経営すべき業種と考えてのことです。
必要な葬具類の最初は黒塗り経机1台からで、葬式が入ると褒美は幸楽苑290円ラーメン1杯づつに餃子と半炒飯のセット頼んで2人で分けて食べました。
今思い出しても旨かった。あんしんサポートに使う費用は全てあんしんサポートで賄うと決めたからですが実際には全く食えません。
食えるようになったのは設立から5年後あんしん館開設してからで、机上計算ですが一定数以上の施行が入れば必ず食えると不安はありませんでした。
ただ千明も収入ゼロ手弁当ですからガソリン代負担、携帯代負担、そして車検を機に廃車して会社名義の車を貸与、それから給料支給でした。
給料まで払えたのは、あんしん館開設以降です。
霊柩車は新車価格の3倍と聞き到底我々の手が届く金額でなく最大の難関になると何度もネットで検索しては溜息をついてました。
同時に葬儀支援を行う上で必要な知識やスキルを得ることも始めました。
普通は先輩から実践で色々教わりますが葬儀屋勤務経験が無く全て学ぶしか無かったのが幸いしました。
簡単に言うと間違った知識を吸収せず済んだのです。
知識としては、
》時間による硬直と軟化、腐敗進行過程等(学生時代学んだ整理解剖学が役立った)
》仏教、神道、キリスト教など各宗教の基本概念と歴史(保育園がカトリックだったのも役立つ)
》人の死後に必要な全ての手続きの具体策(家族親族で10回以上の葬式経験が役立った)
》死化粧(元々美容師に化粧を教えてた人間ですから得意です)
例えばドライアイスは当初は葬儀屋さんが当てるのを見て真似しました。
首の左右頸動脈2本、腹部胸部で4本でしたが改めて学ぶと腐敗進行の速い腹部と下腹部が最優先、次は胸部、季節や状況によって頭部と分り始める。
ドライアイス量は減り火葬時間から逆算しドライアイスを外すと火葬時間も短縮できると分りった。
その意味では時々遺体頭部の横に頭から10cmも離してドライアイスを置く葬儀屋を見ますが、納棺状態でなければ意味はない。
使用量を増やしたいか、何も考えず先輩の真似してるだけで家族にとって決して良い担当者ではない。
不思議なのは今までの人生で得た知識や技術が葬儀支援には全て役立った事です。死体は想像と違い生理的に駄目で無かったのも幸いです。
実践で必要な死体関連の知識と死後に必要な手続きを学ぶ中で自然と弱者家族に最善な方法を考える習慣が出来たようです。
その中で最大の学びは『死後の葬式より残る家族の生活が大事』と気づくが、その視点に立つ葬儀屋は皆無であると分りました。
この時点で葬儀支援の骨子ができたように思う。
ある程度のスキルを得て必要な葬具類を揃えていくと最大の難関が見えてきた。それが霊柩車の取得です。つづく