9.死化粧は湯かん直前、何で?

我想う支援日誌
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家族の一言に気付かされた

元美容業経営者(美容師ではありません)で自社の美容師に化粧を教えてた経験を知ってるからでしょうが、十数年前、施行委託してた葬儀屋から緊急の電話がありました。
「武井さん、脳の血管が破裂して顔が紫の女性がいるんだけど化粧で何とかなりませんか?」
「ん? 普段依頼してる納棺師がいるんじゃないの?」
「そうなんですけど、手に負えないらしいんですよ」
「分かった状態が不明だから確約できないけど準備していくよ」

到着した家はエアコンの無い扇風機だけの民家、猛暑の中で寝てる故人は40代の女性、顔は赤紫で腫れあがってましたが、後頭部と身体にドライアイスを当て扇風機で作業開始、自分では気付きませんでしたが、故人に語り掛けてから作業に入ったようで後で千明から聞かされのは――、

「何処まで出来るか分からないけど、綺麗な顔でみんなに逢えるよう頑張るからね」と故人に語ったたそうで、化粧、髪形、全て終えるまでの数十分、汗びっしょりになりながら、家族から預かった生前(成人式)の写真に近づけようと奮闘しました。

作業を終え家族呼んで見て貰うと「あー、いつもの顔に戻って綺麗になったねぇ、綺麗な顔を見ると実感が湧いて涙が出てきちやうね」と言った言葉に何となく違和感を感じたのが最初でした。

2度目の綺麗になったね

ある葬式で湯かん直前、納棺師が「死化粧から始めます」と化粧をすると、家族が「綺麗になったね」と言った事から『あれ、この感覚は――、』と考えると先の女性を思い出したのです。

湯かん、納棺は滞りなく終了しましたが「死化粧は湯かん直前だから搬送から今まで素顔だろ、搬送直後に化粧してあげれば弔問客は綺麗な顔で逢えたのに何で今なの?」と家族と離れた場所で担当者に確認した。

すると「そうなんですけど、それだと2回分の費用が掛かるんですよ」と分かったような分からんような説明に「あー、そうなんだ」とは言ったものの納得はできません。女性の中には旦那でさえ素顔を見せない人もいるし、素顔で人前に出るのを嫌がる人はいくらでもいるからです。

この言葉を聞いて一番の違和感は化粧する時もありますが、それ以上に化粧するのは葬儀屋でなく業務依頼する納棺師だった事、だとすれば納棺師が入らない葬式は死化粧して貰えない事、化粧しない故人は良いとしても普段化粧してた故人は別途費用を掛けなければ素顔のままです。

俺は搬送直後に化粧してあげる

自分達で施行するようになってから10年近くは搬送直後に死化粧開始、搬送時にいた人以外は綺麗に化粧した故人に逢い「生きてるみたいだね」「綺麗だね」と言われ、映画「おくりびと」が2008年9月に上映された翌年でもあったせいか内心満足してました。

死化粧は生きてる時と違い、体温が低いからファンデーションの伸びず、目は閉じたままの寝顔だから、アイラインやアイシャドウも勝手が違い普段の化粧より数段難しくなります。また当時は、あんしん館も無く自宅安置ですから、室温が高かったり、安置日数が多いと顔が黒ずむ対策も必要でした。

普段より濃いめでピンク系練状のファンデーションを塗り、翌日以降にしっくりくる化粧を行ったり、真赤なルージュは違和感があるのでピンク系・オレンジ系で目を閉じた状態で違和感の少ない化粧を心掛けます。病院、施設でも化粧してくれる所もあるのですが、失礼だし当然ですが素人ですから綺麗にはなりません。

搬送直後と早い死化粧で10年近く自己満足してましたが、ある故人の時から死化粧に対する考え方が変わることになったのは次回アドバイスで書きます。

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